ENGINEER's STORY 「シンプル」で実現する、
コータ/デベロッパの進化

PROLOGUE

東京エレクトロン九州の主力製品、コータ/デベロッパ「CLEAN TRACK™ LITHIUS Pro™シリーズ」。最先端の研究開発の成果による最新鋭の機能を搭載した、300mmウェーハ対応塗布現像装置として、その高い信頼性と生産性が世界中のお客さまから評価されている。このシリーズは、それまでの主力だった製品を一新させる形で産声を上げた。

開発本部 副本部長 執行役員

榎木田 卓
メカエンジニア/1997年入社

大学では機械設計を学ぶ。入社後は、2年間、主に海外での半導体製造装置の据付に携わる。その後、開発本部に異動し、メカエンジニアとして後に主力製品となるコータ/デベロッパ「CLEAN TRACK™ LITHIUS Pro™」のマテリアルハンドリングの設計開発に従事。その後も後継機の開発をリードし、2022年に執行役員に就任。

2000年初頭、東京エレクトロン九州が製造するコータ/デベロッパ装置に対して、ある課題が浮き彫りになった。非常に大規模な人数で開発をスタートさせたために、方向性がなかなか定まらず、コストが嵩んでしまっていたと言う。このままでは、お客さまの要望に的確に応えることができなくなる。そうなってしまう前に装置そのものの考え方を一新し、ゼロベースから新たなプロジェクトとしてスタートを切ることになった。

招集されたエンジニアは少数精鋭。ある案件の対応を終え、台湾から帰国したばかりの榎木田は、半導体製造装置の中でウェーハをサーブする「マテハン(マテリアルハンドリング)」の開発担当として参加することに。

「いかに設計を
シンプルにできるか」
それが、
このプロジェクトの
命題となった。

シンプルになるほど部品が少なくなるため
組み立てやメンテナンスがしやすく、
コストも下げることができるからだ。
また、機械はシンプルなほどに壊れにくくなる。
しかし、それは口で言うほど容易いことではない。
「開発は、後工程のことを
常に意識しなければならない」
これは、本プロジェクトを率いていた、
当時の東京エレクトロン九州の社長の言葉。
榎木田は、この言葉を噛みしめながら、
マテハンの開発に挑んでいった。

この難題で
発揮されたのは、
それぞれの「知恵を
絞る」という力。
そこに役職という
壁はない。

全員が最適解を出すために四六時中模索する。
一歩先を行くためにはどうすればいいか。
社長は出張先からでもアイデアのメモを送ってくる。
誰もが自由に発言する。取引先からも話を聞く。
議論になったときの指標は、
どちらがよりシンプルで、理に適っているか。
ものづくりが心底好きなエンジニアが織りなす
自由闊達な風土が、プロジェクトを促進させていった。

このプロジェクトに携わった頃の榎木田は、まだ若手。アサインされたときには不安もあった。実際、新しい取り組みの中に身を置くと、分からないことが次々と出てくる。だが、分からないを悔しいと思い、力にできるエンジニアは強くなれるもの。榎木田自身も知らない技術的要件に出会うたびに独自に学びを深め、それが今につながる、かけがえのない力になっていると言う。

そして、これまで培ってきた技術に新たな知恵を組み込み、コータ/デベロッパ「CLEAN TRACK™ LITHIUS Pro™シリーズ」のファーストモデルは完成した。それまでの製品と比べて1日あたりの処理枚数は格段に増え、シンプルな設計ゆえに不具合の発生率もかなり抑えられるようになった。現在では、さらに進化させた後継機が世界中で活躍している。

「このプロジェクトに参加しているときが、一番学びが多かった時期だと思う」そう、榎木田は本プロジェクトを振り返る。そこで意識していた、「できるだけシンプルに」「常に一歩先を行く開発」というものづくりの姿勢は今でも変わらない。

時代の要望が多様化し、
地球環境への配慮も取り沙汰される中で、
半導体製造装置の開発はますます難しくなっていく。
しかし、東京エレクトロン九州のエンジニアは、
そんな状況であるからこそ、全員が口角を上げている。
なぜなら、新しい技術に出会え、
世界を変えていくという実感がわいてくるからだ。

今後も、
東京エレクトロン九州は
変わり続ける。
これまでを生かしながら、
革新を求めて。
この熊本の地から世界へ、
一緒に。